「いやっ!!!」
終わらせたくない、終わりになんてしたくない。
怖い、怖い怖い怖い怖い怖い…
結果を出したくない、
結果を知りたくない、見たくない!
もういい、一生このままでいい!!!
ずっと、このまま何も進行しないで。
結果が出ないまま、一生過ごせたらいい。
明日も明後日も明々後日も、この会場で…このまま、ずっと…
苦しい緊張。
上がりっぱなしの心拍数。
不安定な精神状態。
こんなの、一生続けたいなんてドエムだ。
だけど、それ以上に終わってしまうことが怖い。
ねえ、わかって?
苦しいの。だけど怖いの。
お願い、終わらないで。
自分のすべてが、終わってしまう気がするんだ。
「いや!!!」
ワガママだって知ってる。
このままじゃ、棄権になることも知ってる。
だけど、お願い…
今日が一生続いて欲しい
本気でそう願ったの。
―パンッ!!
頬に、痛みが走った。
誰が、ぶったかなんて気にならなかった。
ただ、文句が言いたかった。
「な、何すん―」
「アタシはそんなのとりにきたんじゃないのよ」
言葉をさえぎられるように、きっぱりと言われた。
言ってる意味がわからなくて、言葉が出なかった。
「アンタの学校の卒業アルバムの写真をとりに着たのさ」
「か、関係ない!!」
「そうかい。アンタは、その負け腰で競技に挑んで、その姿を一生に残すのかい」
「・・・」
「アンタが、今ここで怖気づいてる事実を、一生背負うっていうのかい、証拠を残すって言うのかい。」
目を背けたら、負ける気がして…その目をただ見つめた。
言葉にすると、声が震える気がして、言葉は話せなかった。
「・・・胸張っていきな。アタシがしっかりカメラに収めてやるよ。
その写真が一生の宝物になる。そんくらいの気持ちで行ってきな」
そんな考え、一度もしたことなかった・・・。
こんな励まし方が、あるなんて知らなかった。
そうだ、かっこ悪い。
いま、この見損なわれっぱなしの自分が、ここに存在してしまってる。
残してるんだ、事実に。
それの方が・・・
「いやだ!」
「まだ言うのかい」
「・・・だから、頑張ってくる」
今のこの苦しさも、未来への不安も、
終わってしまうことに対する怖ささえも…
今、この瞬間を味わうことは二度とない。
そう思うと、愛しくさえ思えた。
「そうだよ、それでいいんだよ」
いつも撮影に来てたこのヒトを、意識したのは初めてだった。
「・・・絶対、失敗しないでほしいです。最高の一瞬を、逃さない、で」
「アタシを誰だと思ってるんだい、失礼なやつだね」
「・・・えへへ。行って来る…です。」
そのときの結果は、自分の納得のいく結果とはいえなかった。
だけど、後悔はしなかった。
そのときの、自分は最高の笑顔でそこにいたから。
それ以来、あのヒトの言うとおり、その写真は一生の宝物になった。
卒業式の日に、特別に大きい一枚のそのままの写真を、もらった。
あのヒトみたいになりたい。
いつか、同じような苦しみで「らしさ」を失いそうなヒトがいたら
私も同じように、励ましたい。
私に降りたその奇跡、今度は私が降ろす番。
だから、・・・カメラを握った、の。
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